Kii's Open Field

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2024年3月20日水曜日

剪定の目的

 

果樹の剪定は冬に行います。

なぜ冬かというと、休眠期だからです。木々が眠っている間に枝を切るのです。

春に目覚めた時に、そのエネルギーが切除された枝の分まで、

残された枝に十分いきわたるためです。


剪定の目的は、教科書には「樹勢を整えるため」とあります。

ほどよい樹勢の枝に、良い果実が成熟するためです。

強く伸びた枝は、あまり剪定を強くせず、エネルギーを分散させ、

弱い枝は強く切って、残された部分に集中させるのです。


西洋梨を剪定中 手前左の木が剪定前



良い果実を得るためには、程よく樹勢の良い状態が必要です。

元気の良い枝には、元気な葉が育ち、

元気な葉がたくさんの呼吸をして、秋には良い花芽を残し、

翌年に花開いて、良い果実を実らせるのです。


特に良い果実を実らせるためには、数を絞る必要があります。

たくさんの果物が欲しいところを我慢して、

良い枝、良い花芽だけを残して、来る夏の豊作を願います。


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2021年8月25日水曜日

西洋梨がカラスの食害に遭う

十分に想定できたはずの災害を防げなかったことほど悔やまれることはない。
 それでも損傷が最小限で済んだと思えなくはないのが救い。

 
まだ熟していない梨をつつくのは遊びなのか
袋掛けでも傘掛けでもなく、コーヒーフィルタ掛け


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2021年8月9日月曜日

早生プルーンの収穫時期

なかなか待てません。

収穫の適期が訪れるのを。


当地の生産者組合は「待ってはいけない」と言います。

きっとこれまでになにか酷い目に遭ったのでしょう。


早生のプルーン「オパール」は、すっきりとした甘さが特徴。

名前の通りのきれいな色合いで熟します。


果物は全般に、木で熟すと甘みが増し、果物は柔らかくなります。

でんぷんが糖化するからです。

甘みが増すと、それまでの青臭さや渋みが消えて美味しくなります。

しかしその一方で、柔らかくなると果物が傷つきやすく、傷みやすくなります。

収穫前に雨が降り、果物が吸水して膨らむと、皮が裂けてさらに傷みにつながります。


そこで、収穫適期をどう考えるか。

木でなるべく熟し、柔らかくなり過ぎる前のわずかな期間を収穫適期とします。

収穫してからの追熟や、輸送の揺れや時間も考慮して、完熟の一歩前を狙います。

これを「14番目の月」と呼んでいます。


プルーンの品種によって、この収穫適期が短いもの、比較的長いものがあります。

その年の気候にもよりますが、「オパール」はその期間が短く、明日の天候を睨みながら、

収穫すべきかどうかを悩みます。

もちろん、雨でワレてしまうことはリスクとして覚悟しなくてはなりません。


当地の生産者組合は、10番目の月くらいでの収穫を推奨するので、このような心配は無用。

このような理由から、一般の市場には美味しいオパールが出回ることは稀だと思われます。

左のやつが「14番目の月」果皮に細かい貫入が見えます。
真ん中はもう少し、数日のがまんが必要。 右下は論外です。


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2021年4月26日月曜日

さくらんぼ開花直前

茶色で極小さく、硬く締まっていた新しい芽が、

暖かくなるとともに膨れて、

弾けて分かれてきます。

花束状短果枝と呼ばれる花芽には、葉芽1つと、花芽が5〜7個くらい集合しています。

その1つの花芽には、2個〜4個の蕾が折りたたまれています。

それらが一斉に咲くと、それは見事、ぼんぼりのように華やかになります。

今朝は花芽が折りたたまれた蕾が、分かれ始めたところ。 

花が咲く前後は、蕾が膨らみ、開花、そして幼果を結ぶまで、その形態が著しく変わる時期です。植物にとっては、子孫を残すために大切な、しかし形態的には無防備な時期です。

心配が絶えることがありません。

花芽が分かれて蕾1つが明らかになりつつある「水門」


まだ花芽が分かれていない「紅秀峰」


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2021年1月17日日曜日

雪害

今年は厳冬。
 ラニーニャ現象の影響だそうだ。 
12月後半から頻繁に -10℃ を下回る。 
果樹の花芽は凍結(凍害)が心配される。 
 日本海側の冬は日照時間は少ない。
 雪もここ数年のうちでは多いが、此の地の積雪としては平年並み。 
今年は、風の強い日も少ない。 
木々の枝に乗った雪は、穏やかな風と低温とで、なかなか融けないで乗っかったまま。

 それほど多くない積雪量に、油断していた。
 枝に乗った落ちない雪は、硬く締まって重くなっていた。
 想像以上の重みに耐えかねて、 
さくらんぼ、プルーン、西洋梨の枝が、あちこちで折れていたのだ。
 特に枝が硬い性質のプルーンに被害が集中。 
手遅れとなったが、雪の畑を廻り、雪の塊を落としていく。

 毎年、これまでにはなかった現象が起こる。
 2年と同じ年は続かない。
 ラニーニャ後の夏は、猛暑となると言われるが、果たしてどうか。
赤い矢印のところが、折れた場所です。                                    ホームに戻る

2020年11月21日土曜日

季節外れの大雨

「自然には勝てんわ」

近所のベテラン農家さんから、会話の中でなにげなく聞いた言葉です。

それは当然のことかも知れないのだけれど、気候の変化に対応して農作物を生み出し続けている大先輩が、さらりと言われたので余計に耳に残っています。


10月半ばから天候に恵まれない日が続いてはいました。11月に入ってからも雨やみぞれが多く、18日から翌日までの雨が40mm、そして19日午後から20日未明までに 90mm降りました。


本州ならこれくらいの雨は問題ないところも多いと思います。しかし、元々雨の少ない北海道は、対応できずにあちこちで被害が出ます。

排水経路の設計が、大量の雨を想定したものになっていません。小さな水路は傾斜が少なく、その水路から流れ出ようとする小川は既に満杯。その小川から流れ込むはずの本流は、増水時の水位が支流よりも高くなっている。これではあちこちで溢れだすしかありません。そして周辺でいちばん低いところから浸水していきます。

左は土手ぎりぎりの水位で流れる川
右側は本来水たまりなどないはずの畑

収穫を終えたぶどう畑が池になりました

 
スコップとクワで水路を切って排水


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2020年4月26日日曜日

寒の戻りの4月

人の生命を脅かす感染症の広がりが収まりません。
社会生活や経済への影響も、どこまで続くのかも、先の見通しがつきません。

一方で、温暖化の影響なのか、気象の異常、変動の激しさが増しています。
この冬は記録的な暖冬、小雪。
一転して4月からは寒の戻り。
今年はどんな年になるのか、想像がつきません。

それでも季節は動いています。
寒い春に怯えながらも、木々たちが目覚め始めました。


花芽が膨らみ、折りたたまれているつぼみたちが解け始めました。


梅はあと数日で開花すると思われます。



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2020年1月12日日曜日

追悼

信じられません。

あの人のことは、今も良く覚えています。
もう30年以上も前のこと、
あの頃はサラリーマンでした。

サラリーマンにとって、
同期の人(同じ年に入社した人たち)は特別な存在でした。
何も利害関係もなく、好みも性格も違う人同志、
同じ年に同じ会社に、たまたま入った人たち、
そんな人たちだからこそ、偶然に共有した時間が心に刻まれて、
いつまでも残っているのかも知れません。

特にあの人とは、私が学生あがりの、今思えば「使いにくい」新米の頃から、
自分なりの仕事、居場所を確立するまでの時期、
職場での議論や、飲み会でのバカ話をともにしたのでした。
その後、彼女は転勤になり、やがて結婚され、
私は転職して、年賀状だけの付き合いとなりました。

同期の人は、時折私たちの農園を訪ねてくれます。
わざわざ北海道の田舎に、時間とお金を使って立ち寄ってくれるのです。
そして話をするうちに、立場の違いも、経過した年数も、寄る年波も、
すべて忘れたかのように楽しいひと時を過ごせます。

話は逸れますが、私は新たな挑戦のために転職してそれまで住んだ土地を離れ、
様々な意味での持続性に疑問を持ち、農家となり北海道に移住しました。
その後、農園を訪れてくれる人も多くあり、
就農前よりも以前の知人との交流が増えました。

もしもあの人が訪ねてきたら、
きっと同じように過去がよみがえる瞬間があったのだと思います。


今日、あの人のご家族から、喪中の葉書を受け取りました。





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2020年1月5日日曜日

小雪の可能性、あるいはおそれ

雪が少ない

この10年で最も積雪量が少ない状態。
まだまだ冬は前半戦なので、今後は挽回するかも知れませんが、
長期予報ではその可能性も小さそうです。

除雪作業はほとんどありません。
例年なら、2〜3日に1日の頻度で1〜2時間掛かります。
1週間続くこともあります。
おかげで、ゆっくり身体を休める上、時間を有効に使えます。
いつもは心配になる、倉庫の屋根、さくらんぼハウスの樋の上、
幼木などの細い枝など、雪の重みに気を遣うこともありません。
仁木町民スキー場は、ところどころ地面や草が顔を出しているものの
なんとか利用可能のようです。

一方、心配なことがあります。

夏の水が少ないのではないか。
山の地下水は十分蓄えてくれるだろうか。

低木の芽に凍害はないか。
いつもは雪に埋もれるブルーベリーが外気に触れる状態。
暖冬とはいえ冷え込む朝はマイナス10℃を下回ります。

剪定作業に例年より時間が掛かるのではないか。
高い枝から枝へ移動するのに、雪上で脚立を引き回す必要があります。

寒波の揺り戻しがあるのではないか。
ベテランの気象予報士は、経験的にあるのでは、と言っています。


さくらんぼハウスに取付けたメジャー。 赤矢印が60cm(平年値)、現在は約20cm。


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2019年12月15日日曜日

雪に足跡

1年半ぶりに書きます。
昨年春の訪れから、この秋が終わるまで、ずっと余裕のない状態が続いていました。

いつもある程度は波があるのですが、例年になく寒暖差の激しい初冬を迎えています。
突然真冬が来たと思えば、秋か春のような緩んだ日もあります。
畑も11月のある日、1日でモノクロの世界になりこのまま根雪かと思えば、
気温上昇と雨で、また地面が顔を出します。
総合計するときっと「暖冬」なのでしょう。

ほんの少し積もった今月のある朝、畑で足跡を見つけました。



下左が人間(私)の26cm防寒長靴です。
結構大きな足、指と肉球がはっきり見えます。
歩幅が大きく、小走りだったのか体重の掛かり方が不均等です。
大きな足サイズ、明確な指の分かれ具合からみて、
おそらくアイツ、
アライグマです。

見た目はかわいい、おおきめのタヌキですが、
農家の間では「第2のカラス」と呼ばれ、走れる・登れる・泳げる、
天敵はピューマ(日本には居ない)のみ
なんでも食べ(果物も好物の1つ)、繁殖力、生存力が高い、などなど
北海道でも近年個体数、被害ともに増え続けているとのこと。

他人ごとではありません。


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